◇ウェルカム・メッセージ第16号◇
(2005年5月8日〜2006年5月16日まで掲載)

<<(社)日本経済団体連合会 産業技術委員会 2006年4月18日の記事より一部引用>>

エンターテインメント・コンテンツ関係者の戦略的コラボレーションに向けて
〜ユビキタス時代の新たなビジネスモデル構築のための提言〜

1.はじめに

わが国のエンターテインメント・コンテンツ(以下コンテンツ)産業は、アメリカに次ぎ世界第2位となる13.3兆円の市場規模を有し、日本経済の持続的発展を支え、国民に心の豊かさをもたらす産業としてますます重要になっている。他方、わが国のコンテンツ産業の市場規模は、GDP比率では2.3%を占めるに過ぎず、アメリカの4.6%、世界平均の3.3%と比べても低く、潜在的な成長可能性を秘めていると考えられる。

近年、ハードの技術革新の加速化やユビキタス化の進展、利用者ニーズの多様化等、わが国コンテンツ産業をめぐる環境は劇的に変化している。こうした環境変化を捉えた新たなビジネスモデルが徐々に現れてはいるものの、新規投資等に伴うコストを回収し収益を得るだけの市場規模を顕在化させ、一つのビジネスモデルの成功がさらなる新規参入を促し、コンテンツ・ビジネスの飛躍的拡大を実現するには至っていない。

コンテンツ・ビジネスの飛躍的拡大に向けた好循環を達成するためには、ユビキタス時代にふさわしい法整備や行政改革等が求められる一方で、豊かな創造性をもちクール・ジャパンの象徴であるソフト業界と、世界に類ない技術力をもつハード業界、さらには世界的にも最高水準の通信サービスを提供するキャリア等の幅広い関係者が、それぞれのビジネスモデルや課題について相互理解を深め、国際展開をも含めた市場全体の拡大に向けユーザー・ニーズに応える形で共に発展する新たなビジネスの将来像を描き、連携していく必要がある。これまでもこうした幅広い関係者による対話の必要性が説かれてきたものの、その機会は乏しく、対話の充実・整備が求められていた。

そうした状況の中、日本経団連では2004年8月より、ソフト、ハード、キャリア等コンテンツ関連企業のトップによる「エンターテインメント・コンテンツ関係者連携に関する懇談会」を設置し、相互理解を深め、コンテンツ・ビジネスの将来像等について議論を重ねてきた。こうしたコンテンツ関係者による連携は、民間の場で自主的に進められてこそ意義があり、同懇談会の取組みは、政府においても有意義な成果を示すことが期待されているところである。

そこで、本提言では、同懇談会におけるこれまでの議論の成果をもとに、今後3年から5年を視野に、ユビキタス社会におけるユーザーのニーズと権利者の保護のバランスを図りつつ、ソフト・ハード・キャリア等の連携による新たなビジネスモデル構築に向けた課題を整理し、今後の協力方策について提案することとする。

2.コンテンツ・ビジネスをめぐる環境変化

メディア端末の技術革新やネットワーク化・ブロードバンド化は目覚しく、ユビキタス化が急速に進んでいる。こうした動きは今後3〜5年でさらに加速することが予想され、新たなビジネスモデル構築に際しては、こうした環境変化を的確に見極め、前提とする必要がある。

(1) ハードの技術革新

メディア端末の技術革新は目覚しく、デジタル化、ハイデフィニション(HD)化等に伴う高性能化・高機能化により、コンテンツの創造・保護・活用のあらゆる側面において大きな環境変化をもたらしている。こうした傾向は、ネットワーク化によるインタラクティビティ(双方向性)の付与と相まって、今後さらに顕著なものとなり、現状のビジネスモデルに大きな影響を与えるものとなる。他方、こうしたメディア端末の技術革新がユーザーの利便に即するためには、使いやすいユーザー・インターフェースの構築が不可欠である。パソコンに比べ操作がシンプルな情報家電は日本が競争優位を持つ分野であり、新たなビジネスモデルを世界に発信する際の有望な媒体となり得る。

(2) ネットワーク化とブロードバンド化

わが国の高速・超高速インターネット加入者数は2005年9月時点で2148万人に達し、わが国の通信サービスは通信速度や利用料金を含め、世界的にも最高水準にある。また、電力線を通信インフラとして活用する電力線搬送通信(PLC)等新たな動きもある。さらに、高密度化したブリッジメディア、パッケージメディアも端末間を結びつける媒体として機能しており、これらを相互に融合させ付加価値の高いサービスを提供するモデルも登場している。こうしたブロードバンドの普及や記録媒体の高密度化等により、高性能化したメディア端末同士がネットワーク化されることでユビキタス化が進み、いつでもどこでもコンテンツを楽しめる環境が整備されつつある。こうした傾向は、IPv6や次世代基幹ネットワークNGN(Next Generation Network)等の本格導入によってますます顕著なものになり、将来的にはユビキタス・ネットワークが前提のビジネスが展開されることになる。

(3) コンテンツのマルチユース市場の拡大

メディア・ソフト市場は、近年、約12兆円から13兆円規模で推移している。一次流通市場が縮小する中、マルチユース市場は2003年までの3年間、年平均2000億円ずつ拡大しており、コンテンツのマルチユースは拡大傾向にある。 メディア端末の高性能化やブロードバンド化は、コンテンツとメディアの分離を促進し、マルチユース、すなわち収益機会の拡大に寄与しているとも言え、わが国のコンテンツ・ビジネスが飛躍的に発展できるか否かはマルチユースの展開如何による。メディアの違いによる流通の垣根は年々低くなっており、マルチユース拡大に向けたさらなる環境整備が求められる。

記事全文は以下のURLより
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2006/019/honbun.html

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