◇ウェルカム・メッセージ第11号◇
(2005年5月23日〜2005年6月26日まで掲載)

有限責任事業組合(LLP)について
http://www.kyushu.meti.go.jp/ivent/17_5/170513_llp2.pdf

経済産業省の主導により有限責任事業組合(LLP)が誕生する。LLPは民法組合の特例制度として、新しく創設されるもので、これによってIT関連や金融関連、デザイン事務所などの専門家や、産学連携、ベンチャーと大企業の連携、共同研究開発などにとって非常に利用しやすい組織が生まれることになる。つまり、優れた技術はあるものの資本が劣る専門家(技術者など)や、中小企業などが、大企業などと共同で仕事をすることができる全く新しい形態の組合を意味する。

有限責任事業組合(LLP)の特徴
・有限責任制…事業における責任については、出資額までしか負わない
・内部自治原則…内部組織については自由に決めることができる
・構成員課税制度…LLPへの課税は無く、出資者に直接税金がかかる

アメリカではLLC(リミテッド・ライアビリティー・カンパニー)共同会社と呼ばれる有限責任会社が普及し、共同開発事業やIT分野で大いに活用されている。また、イギリスではLLP(リミテッド・ライアビリティー・パートナーシップ)が法律事務所やデザイン事務所、IT関連事業で大いに活用されている。

合同会社(LLC)の活用分野としては、法人であることから永続的・安定的収益事業、株式公開を考慮した事業等に向いた形態といえるだろう。

一方、有限責任事業組合(LLP)は、法人や専門家の能力などを活用する事業、ハイリスク・ハイリターンな事業、共同研究開発、事業としての期限が設けられているような事業などに活用分野を見いだせるものと考えられる。

合同会社(LLC)は、株式会社への組織変更ができ、会社の合併・分割もできる。また、構成員が一人であっても存続していくことができるが、有限責任事業組合(LLP)の場合はできないという特徴がある。だから、特に上場を目的にしているような場合に選択すべきは有限責任事業組合(LLP)ではなく、合同会社(LLC)になるのではないかと考えられる。

日本にて共同事業を行う場合によく利用される民法組合には、法人税はかからない。その代わり構成員課税になるので税金面では有利だが、責任はどうなるのかというと、事業に失敗すれば出資者全員が無限責任を負うという大きなデメリットがある。また、株式会社などの場合であれば責任は有限責任で、出資以上の責任は負わないが法人課税が行われるということになっている。

LLPは、このような組合と会社のいいところを組み合わせた新しい「組織」ということがわかるだろう。このLLPは、出資者の責任については有限責任で、出資以上の責任は負わない。また課税に関しては構成員課税が適用されることになる。日本では近年、高度な知識・技術やノウハウなどの資産を持った人や会社などが結集し、共同事業というかたちでこれらの資産を有効活用するという組織形態が求められている。

これまではこのような組織形態がなく、そこで諸問題を解決すべく、全く新しいLLP制度を民法組合の特例制度として創設することとなった。このLLPを活用することによって、従来個人の専門家などには困難だったリスクの高い共同事業への出資が、それほど難しいことではなくなり、産学連携や研究開発など活用する価値の高いものになると期待されている。

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