◇ウェルカム・メッセージ第7号◇
(2005年2月7日〜2005年2月27日まで掲載)

〜科学技術振興調整費に注目〜ベンチャー企業の上場の期待〜

2月7日(月)は平成17年度の科学技術振興調整費の応募締め切り日。さてどんな革新的研究が採択されるのか、期待感に似た楽しみがゴールデンウィーク頃まで続く。春の国立大学は、法人化後2期生を迎える入学式。市場の春は、年度替りの決算発表シーズンで多忙となる。今年はどんな新興企業が上場を果たすのか、証券市場も活況になる季節。新緑の芽が出る春は、”旬”を楽しむ季節なのだ。

我が国の科学技術振興のための研究予算は、他の予算と異なり毎年増えている。概ね4800億円(文科省)の競争的研究予算が、大学等を優先対象に公募されている。新興企業の登竜門は、証券市場での上場が企業の健全性、成長性を計るひとつの関門だろう。だからこそ市場で公開することができる。非上場だから悪いというのでは決してない。ベンチャー企業の定義は、証券市場に上場することで多額のキャピタルゲインを手中にする新興分野の、産業チャレンジャーと訳すのが一般的だ。今のところ同様に計る方法はないだろうが、膨大な科学予算をつかってどれほどの国際競争力が高まったのか、また人材育成の効果や社会貢献度、大学経営の経済的還流効果や貢献度、社会評価度など、税金投入の多額度数に応じ上場基準に似た公開透明性を併せ持つ「公募採択後の結果公開」の必要はないだろうか。

大学は基礎研究やプラス教育が大切な使命であることはいうまでもない。元来、ベンチャーが期待できないといわれてきた大学。しかし、この3年余りで大凡1000社に迫るベンチャーが大学から起業している。目を見張る前進だ。ただし、ここからが問題なのだ。これは全国立大学法人83程の総計数。法人化された大学発ベンチャーの上場益すなわちキャピタルゲインは、起業した教官の研究に基づき母組織である大学と発明者に還流する仕組みだから、すべからくその利益格差は各大学間で大幅についてくる。地方大学は特に市場に遠いこともあって、なかなかこの差を縮めるには困難を伴う。上場は、地元経済界を挙げての上場機運の高まりも極めて大きなトリガーになることから、やはり産学官が連携してこうした機運を高めるムードメーカーにならなければいけない。

1949年6月設立の福岡証券取引所の上場企業は159社でその内、福証単独上場企業は35社。バブル崩壊、金融再編など伴う構造不況も加勢して、ここ10年近く福証にも危機が叫ばれ続けてきた。こうしたなか2000年5月の新興企業向け市場「Qボード」開設後、泣かず飛ばずだった上場機運が盛り上がりつつある。その一つの要因は、松井証券(東京)、イー・トレード証券などのネット証券の福証加入によって、個人投資家の売買が増え、さらには上場株式公開を支援するエイチ・エス証券やディー・ブレイン九州などの台等で、福証市場に新しい風が吹きはじめベンチャーキャピタルの意識までも変化する仕掛けがあったからだ。

立命館大学発の研究成果に目をつけた若いベンチャー企業がある。ヤフーやグーグルという世界トップの検索エンジン企業のエンジン開発競争は熾烈だ。ただ単に早く探す目的に辿り着く、という行為に留まらない。大学ライブラリー蔵書検索、ムービー検索等々。デジタルアーカイブの世界観が根底から変わる研究開発が、「検索エンジン」のあちら側で進んでいる。当然、インターネット関係のデジタルコンテンツは、証券、金融に留まらず世界規模で変容していくだろう。少なくとも近未来のインターネット環境は科学技術のR&Dにおいて共通のプラットホームを形成し、より早い速度で「あちら側」の世界で各分野の融合をますます進化させることになる。これによって、新興分野の領域が拓かれ新しいベンチャー企業が、地方にもどんどん生まれることが期待されるだろう。

そのためには産学官はより具体的な体制で連携して、科学技術振興調整費など重要課題に取り組む申請段階から、その大学教官に注目し地元でのベンチャー起業と上場機運を高めるムードづくりを怠ってはならない。

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