◇ウェルカム・メッセージ第5号◇
(2004年12月22日〜2005年1月23日まで掲載)

〜大学や自治体に地方は産学官連携の何を期待するだろう?〜

大学と大手企業の科学技術研究費を合計すると、16兆8412億円。GDPに占める割合からすると米国2.67%、ドイツ2.52%を抜いて3.35%で、世界一だという。

どうも一律に物事を進めたがる官民社会・日本。
産学連携といえば、決まって知財、ニーズとシーズのマッチング、大学発ベンチャー、ライフサイエンスに、ナノテク・・オットトット!!ちょっと待てよ、大学に期待する社会ニーズとはそんなもんだろうか?

確かに重点投資の必要な研究分野は重要でだろう。我が国の法人税の7割は従業員10人以下の中小企業が納めている。このような零細企業の中にも素晴らしい技術力を備えた会社が、多く存在するのも日本の強みでもある。が、しかしこの小さな企業群は景気の動向に最も左右される、弱い経営体質であることは否めない。昨今の状況から考察すると、共同研究よりも、試験研究とか、大学に備わった設備やその他様々な社会的ストック活用して設備投資の薄いところをカバーしたい。そんなニーズが彼ら中小企業の本音ではなかろうか?

我が国には、ぴんから、キリまで、全国津々浦々に大学がある。その多くが、政府が期待するような国際的競争力を備え、非常に高度な研究力を備えた教官ばかりが、どこの大学にも存在するのではない。大学企業合わせて787.200人もの研究者が、17兆円に近い世界一の研究費を使っても、まだ日本の大学の国際競争力は38位だという。

別の見方に例えてみよう。日本国中の全部の大学が世界のトップ走る、大学のメジャーリーグで活躍できるレベルではない。偏差値のレベルに合った大学があるように、身近なところにある地域の大学の社会機能やストックを活かす、それぞれの地域にあった産学連携の新しい公式(ブランド)が生まれてもおかしくないだろう。つまり、大学と地域が一体となって、特色ある産学官連携のスタイルを構築すべきではないだろうか。

以前、中坊さんが、「一兆円って、どんくらいすごいか知ってますか?」と、講演で聴衆に質問。続けて、「1兆円を普通に使おうと思えば、毎日100万円を使い切っても、3000年かかる」と、言ったそうだ。でかい世界に羽ばたく人には温かく応援し、成功すれば三位一体で縮じむ自治体に還元してくれる。ひいては地域が豊かになる。そんな中小の、普通の会社の研究者にも目を向けようではないか。そして産・学・「官」、トライアングルの一辺である「官」、地方の自治体に目を覚まさせ、もっとしっかり「官」の役割を持って関わってもらい、時代認識を新たに、それぞれの産学官連携の特色あるブランドづくりに取り組んでもらいたいものだ。

【お奨め】今月発売中の文芸春秋1月号に「出でよ、平成の二宮尊徳 禁欲の富国論人口減少社会への挑戦 猪瀬直樹 リポート」、なかなか読み応えある。著者独特の歴史分析も面白い。置き換えればこれこそが、大学や地方自治体が自らの社会機能を活かし、産学官連携で取り組むべき課題の一つではないだろうか、と。

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